【完】彼を振り向かせる方法
へぇ、そっか。
急用って、幼なじみの女の子に呼び出されたとか……そうゆう理由?
「千紘ちゃん、大丈夫?なにかあった?」
さっきまであんなに盛り上がっていたのに、みんな何かを悟ったように、暗い顔をしていた。
「うん、全然大丈夫!なんかいま先輩忙しいらしくて、邪魔したくないから切っちゃっただけだよ」
こんなときでも作り笑いができている自分に、ちょっとだけ感心。
いや……できてないのかな。
みんなの表情、全然変わってないんだもん。
「……ごめん、ちょっとお茶買ってくるね」
そう言った私は、財布をもって大部屋を抜け出した。
お茶……さっき自販で買ったばっかだし。
1日目でまだほとんど把握できていない宿舎の中を、あてもなく歩く。
「……っ」
泣きたい。
一粒……頰をつたった瞬間、それを追いかけるように涙は溢れ出した。