【完】彼を振り向かせる方法
客室が連なる廊下を歩きながら、泣いた。
部屋着のトレーナーが、涙で濡れる。
あーあ……おろしたてなのにな、これ。
そんなどうでもいい感想を心の内で述べた。
「……あれ」
気づくと私はどうやら、行き止まりのところまで来てしまったみたい。
目の前には、"非常階段"の文字。
この扉を開けると、非常階段につながってるんだ。
……ガチャ。
重い鉄の扉を、私は無意識に開けていた。
「わっ……」
私が開けた小さな隙間から勢いよく風が入り込んで、思わず悲鳴をあげてしまった。
全開にしてそこを閉めると、いままでとはまるで別の世界が広がっていった。
「キレー……」
目の前に広がる、空と海。
海の中で蛍が生きているみたい。
無限大の星が、海をスクリーンとして映し出されてるんだ。
非常階段の電灯がなければ、きっともっとたくさんの星が見える。