【完】彼を振り向かせる方法
いつの間にか"振り向かせる努力"から"嫌われない努力"に変わってたことに
私……やっと気づいた。
「さよなら……かな」
ガチャ……
鼻をすすって小さく呟いたそれは、後ろの扉が開く音でかき消された。
「ヒロチー……なにしてんの?」
「え……なんで」
「自販機行く途中で、ヒロチーの背中が見えたんだよ」
思わぬ人の訪れに、私は勢いよく振り向いた。
……カケちゃんだ。
ガチャンッ。
重たい扉が彼の後ろで閉まった。
その瞬間宿舎の中の光が消えて、辺りはまた暗闇に包まれる。
「なに、してんの?」
ゆっくりと私に歩み寄って、カケちゃんは問いかけた。
カケちゃんを見ると、さっき部屋の中で聞いた話が耳元で蘇ってくる。
『キスしてくれた』
『エッチしてくれるのかな?』
やだ……聞きたくない。