【完】彼を振り向かせる方法
私は現実から逃げるように、ギュッと目をつむった。
涙の理由ははっきりしたものの、まだこっちがわかってなかった。
カケちゃんの話を聞くと、なんで胸が苦しくなるのか。
「……もしかして、俺のこと怖い?」
「えっ……」
「泣いてる」
あまりにもらしくない、弱々しい声が聞こえて、彼を見た。
「ち、ちがうのコレは……」
「違うって……じゃあ、なんで?」
いつもと同じ優しくて心地いいトーンに戻り、微笑みかけてくれた。
カケちゃんのずるいところは、こうして優しく受け入れて、人を正直にさせちゃうとこだよ。
「先輩に電話したらね……女の人の声がしてて、それで私……」
思い出して、また鼻の奥がツンと痛む。
泣いてるとこなんて、見られたくない。
私はカケちゃんに背を向けて、さっきと同じ、空と海を見据えた。
そのときだった。
「へ……?」
背中に少しの熱と、肩をギュッと握りしめる、手の感触を感じた。