【完】彼を振り向かせる方法
俺の大切な女の子だから……これ以上、距離を開きたくなかった。
大切で、大好きで、たまらなく欲しい。
ヒロチーはそんな女の子だ。
* * *
中学3年のとき、俺には彼女がいた。
初めて好きになった女の子。
最初で最後の恋人だって、15歳の子供が、そんなことを生意気に口走っていた。
「ねぇ、翔……あのね私、話があるの」
「ん?なに?」
そのときの彼女にあの話をされたのは、学校からの帰り道だった。
「……あのさ、別れよう」
落ち葉を踏みながら歩いていた足が、硬直した。
「なんで……?」
俺は先に立ち止まった彼女を振り向いて、問いかけた。
「翔は……女の子とばっか遊んでたじゃん」
「別に今はそんなことねぇし……なに、信じられないの?」
「不安なんだよ……今まで遊びで色々経験してきた子たちと比べられると思うと……!」
彼女は目に涙をためて叫んでいた。
いまでも鮮明に覚えている。
俺の大好きだった彼女の見せた、最初の涙。