【完】彼を振り向かせる方法
そんな俺を変えるきっかけとなったのは、
紅葉が散りゆくのを窓越しに見つめていた、ある日の放課後のこと。
実はその日、担任から放課後まで教室に残れと指示されていた。
「あの……大地くん?」
外を見据える俺の名前を呼ぶ、小さくて細い声。
彼女だった。
「お、大地いるじゃねぇか」
「センセーが残れって言ったんじゃん」
そのとき彼女の後ろから現れたのは、担任だ。
「お前、今日から水曜と金曜は勉強していけ。ここ、使っていいから」
「……は?」
「本気で高校入れねぇとやばいだろ?
だから、優等生の上条に教えてもらえ。そんでちゃんと高校入れ。いいな?」
今思えば、あのときの担任には感謝するべきなのかも。
だってこんなこと押し付けられなきゃ、俺とヒロチーは一生交わることのない、系統の違いすぎる人間だったから。
「大地くん、あの、今日からよろしくお願いします」
「……うん、よろしく」
我ながらあのときは、相当無愛想な面していた気がする。
それでも彼女はちゃんと、俺と向かい合わせで座ってくれた。