【完】彼を振り向かせる方法
ヒロチーが俺の喜びの糧であると、
そのときにはすでに感じていたと思う。
知らぬ間に目で追っていたのも、きっとそのせいだ。
あのときは全然、気づかなかったけど……。
そして、待ちに待った春が訪れた。
「いってきまーす」
妹や弟たちに見送られた入学式の朝。
駅に向かい、改札をくぐって、ホームの階段を下りて行く時……俺は見たんだ。
「先輩の学校の駅って、どこなんですか?」
「……豊桜高校の最寄りの次」
「へ、へぇー!近いですね!一緒に帰ったりしませんかっ?」
「帰りは1人がいいから」
「そ……そうですよね」
桜が舞い込んでくるホームの真ん中で、照れ笑いするヒロチーと、
その横にいる見知らぬ男の姿を、見たんだ。
そのため俺は、わざと彼女たちから離れた車両に乗るようになった。
胸がキリキリと痛む。
毎日、毎日、後悔が募るばかりだった。
もっと早く、ヒロチーへの気持ちに気付いていれば。
そして、気持ちを伝えられていれば……って。