【完】彼を振り向かせる方法
─────……
小刻みに震える両足をなんとか動かしながら、真っ暗闇の茂みの中を歩いている今。
クラスの子たちに見送られてから五分くらい経つけど、
今のところなにも起こってない。
けどさ……
カサカサッ……
「ひぃっ……!」
私の消え入りそうな悲鳴と同時に、隣にいるカケちゃんは音のした方へ懐中電灯を向けた。
「だいじょーぶ。鳥だよ、鳥」
「う……うん」
まるで子供をあやすみたいに、私の頭をポンポンと撫でるカケちゃん。
「んー……ヒロチーさ、手ぇ出してみ?」
「手……?」
「そ。怖さ半減マジック」
そして立ち止まった彼は差し出した私の手を、ギュッと握りしめた。
わ……。
大きくて角ばった男の子の手に触れられて、鼓動が抑えられない。
これは……世に言う吊り橋効果ってやつなのか、それとも本当に……。
「どう……?いや?」
前を光で照らしたまま、カケちゃんは私の顔を覗き込んだ。
ずるい……そんなの、私がなんて答えるかわかってるくせに。