【完】彼を振り向かせる方法
「いや、じゃない」
「……ん、じゃあ行こ」
辺りが真っ暗なせいで、カケちゃんの表情が見えない。
……なんて、建前。
私が見れないんだ、きっと慣れてないから……恥ずかしいんだ。
優しく、包み込むように握られた手に視線を注ぐ。
あったかい……あったかいよ、カケちゃん。
本当にマジックみたい。
カケちゃんがそばにいるってことが、心までちゃんと伝わってくる。
ただ隣にいてくれるよりもずっとずっとドキドキするし、安心する。
さっきと変わらない夜の茂みの中を歩いてるのに、全然違う。
心強いな……って、思うよ。
「カケちゃん、ありがと」
「お礼なんていいよ。今日の俺の役目は……ヒロチーを守ることだからね」
私を、守る……。
「まぁ……今日だけじゃなくて……出来ればずっと守りたいと思ってんすけどね、俺は」
照れ隠しなのか、懐中電灯をブラブラと動かすカケちゃん。
私の目の前で、芝生の道を照らす光が上下に揺れた。