【完】彼を振り向かせる方法
ギュッ……。
そこで私は、自然と彼の手を強く握り返していた。
胸が苦しいよ、息が苦しいよ。
この手を、離したくないよ。
私たち以外に誰もいないこの空間が、そんな気持ちにさせる。
どうかしてるな……私。
「お、ここ右だって」
「あ……うん」
一本の大きな木の前にある矢印の書かれたプレートに光を照らして、カケちゃんは私の手を引いた。
「つーかお化け役でてこねーな……どこにいんだろ、俺ら」
「お化け役?なに?それ」
「ん?あー、そっか。ヒロチー説明受けてるとき上の空だったもんな」
彼はククッと喉を鳴らして笑う。
え……あぁ、そうだった。
クラス委員の子がなにか言ってたっけ、茂みに入る前に。
内容は、記憶を辿っても全然思い出せない。
「待って」
すると、いきなりカケちゃんが立ち止まった。