【完】彼を振り向かせる方法
私の腰にはまだ、彼の手の感触がある。
ということはつまり、私たちはどちらからともなく、この態勢になったってわけで。
じゃないと、あんなに強くカケちゃんの身体を縛り付けていた私の腕が、
いとも簡単にストンと滑り落ちるわけがないんだから。
無意識に、私はこの状況を受け入れた……って、こと?
目の前にはカケちゃんの真剣な表情。
しずくが乗りそうなほど長いまつげ。
いままで散々女の子たちを虜にしてきた唇。
筋の通ったキレイな鼻。
私の表情を映し出す、澄んだ瞳。
暗闇に慣れてきたからなのか、全てが鮮明に見えてくる。
沈黙の私たちの間に、風に煽られた葉が一枚通り抜けた。
それが合図だ、とでもいうようにカケちゃんは私の顎に手を添えた。
触れられた瞬間に、ドクンと波打つ心臓の鼓動。
そっか、私
……キスするんだ。