【完】彼を振り向かせる方法
「なんで、そう思うの?」
うるさい心臓をなんとか抑えながら、凛にそう聞いた。
「だって帰って来たときから二人、なんかぎこちなかったからさ......。
あ、ちょっとそのグラタンちょうだい」
「うん......」
凛にも分かるほど、私たちぎこちなかったの......?
彼女がまだアツアツのグラタンに手を伸ばしている間、私はあのときのことを回想していた。
キスをしたあと......たしか私たちはずっと無言で、茂みの中を歩いていた。
唇も、まぶたも、頬も、足の先まで全部熱を帯びていて、
正直どうやってゴールにたどり着いたのか、よく覚えてない。
ただ、手を繋ぐ余裕なんてお互いになくて、怖がる余裕もなくなっていたことは確か。
それで私たちが茂みを出たときには、すでに後ろに並んでいたはずの2組のペアが私たちより先に到着していた。