【完】彼を振り向かせる方法
外装からして豪邸だっていうのは感じていたけど、まさかこれまでとは……。
「コーヒー、飲める?」
キッチンから戻ってきた先輩は、マグカップを2つ持っていた。
コーヒー……苦手なんだよね。
けどもう用意してるみたいだし
「だ、大丈夫です。ありがとうございます」
断るわけにはいかないよね。
笑顔を無理やり貼り付けると、先輩は無言で目の前のテーブルの上にそれらを乗せた。
ボフッ。
今度その音を立てたのは、先輩だ。
私の隣に座り、再びマグカップを持ち上げてコーヒーを啜っていた。
慣れないな……この感じ。
隣に座られるなんて、ほとんどない。
初デートの、映画館の中でが初めてだったし。
だから、余計に緊張してしまう。
私は気を紛らわすために、乾いた唇を軽く舌で舐めた。
「で……話ってなに?」
ドキンッ……。
隣から響く低い声に、肩がピクッと揺れた。
こんな固まってる場合じゃないんだ。
ギンガムチェックのキュロットの上で、私は拳をギュッと握りしめた。