【完】彼を振り向かせる方法
「あの、話っていうのはその……」
「別れ話?」
「えっ……」
マグカップをコトンとテーブル上に置いた先輩は、先手を打ってきたんだ。
相変わらず視線はこちらを向かない。
それなのに、バクバクと音を立てる心臓。
どうしよう……なんて言えばいいんだろう。
フリーズ状態に近い頭の片隅で考えて見ても、答えは1つも見当たらない。
違う……答えなんかない。
私が伝えるべきことを、しっかり伝えればいいだけだ。
「……はい。私、先輩とお別れするために……今日来ました」
視線の先は飾られている絵画に向けたまま、震えた声でそう言った。
「……」
先輩はなにも喋らずに、もう一度コーヒーを口に含んだ。
エアコンの音だけが支配するこの空間で、鼓動が徐々に早まる。
音が漏れてしまいそうなほど。
先輩……いま、どんな表情をしてるのかな。