【完】彼を振り向かせる方法
「二股ってこと?」
鼻で笑ったあとで先輩はそう聞いた。
横から微かに、頬が引きつっているのが見える。
「……違います」
「……」
「私が今好きだと思えるのは、その人だけなんです」
不思議と声は震えなかった。
そして、アイスコーヒーを啜る音は相変わらず左隣から響いている。
先輩は、何も言わない。
もともと私のことを好きだったかさえあやふやだったんだし、
今更こんなことカミングアウトされても、なんのダメージもない。
彼の心の中はきっと、そんな感じ。
そのはずなのに……
グッ……トスンッ!
「……せん、ぱい……?」
私はどうしてか両手首を強く掴まれて、ソファ上で仰向けにさせられていた。