【完】彼を振り向かせる方法
私もあんな事を自分が言うことになるとは、思わなかった。
咄嗟に思いついた、策略。
まだ手を握りしめていないと、震えが止まらない。
「さぁな……」
よく分からない。
いま先輩がフッと小さく笑ったわけも、答えをはぐらかすわけも。
「あの先パ……」
「めんどくさい、早くどっか行って」
ハァ、と一度ため息をついてから先輩はそう言った。
あ……いつもの、先輩。
私が好きだった、先輩だ。
「いままで、私と恋をしてくれてありがとうございました」
もう一度、腰を折る。
ダークブラウンのフローリングに、一粒二粒と雫が落ちて広がった。