【完】彼を振り向かせる方法
「千紘」
そんなときに届いた、先輩の声。
私は勢い良く「はいっ」と返事をして、頭を上げた。
すると彼はソファに座ったまま、私から顔を背けたまま、話し出した。
「こんなタイミングで言うのもなんだけど、きっと今日で会うの最後だから……言っておく」
そのとき黒髪から覗く先輩の横顔が、なぜか穏やかに見えた。
「俺は千紘のこと、恋愛対象として好きになったことは……一度もない」
「……え?」
「千紘は、俺にとってただの保険だった」
やっぱりそうだったんだ……と思う反面、胸に何かが突き刺さる。
私は……保険?
「千紘に告白されたとき、このまま手放すよりも念のためにとっておいた方がいいって、
あのときの一瞬でそんなこと考えてた」