【完】彼を振り向かせる方法
『おぉーい!カケ兄にお客だぞ〜‼︎女だぞ〜‼︎』
色々頭の中で思い描いている間に、陽気な誰かさんは大きな声でそう叫んでいた。
きっと部屋の中まで響くようにボリュームを上げているんだろう。
うーん、この子はカケちゃんの弟さん?いや、この声の高さだと妹さんってことも……。
ガチャ……キィッ
なんて油断をしていると、年季の入った目の前の扉が開いて
「いらっしゃい」
カケちゃんがヒョコッと顔をのぞかせた。
「おは、おはようっ」
「ん、はよ。つーか暑いっしょ、早く入りな」
手招きに促されて、そのままお家に足を踏み入れる。
男の人のお宅に、二日連続で上がってしまいました……。
だけど昨日とは面持ちがまるで違う。
ミュールを脱ぐ私の前にある背中に、胸がギュッと締め付けられる。
そしてこっちを振り向くと、彼は本物の王子様みたいに笑った。
いや……私にとったらカケちゃんはもう、すでに王子様だ。