【完】彼を振り向かせる方法
「よっ……と」
脱いだミュールを玄関の隅に揃えて膝を伸ばし、立ち上がった。
「その服、やっぱ似合うねヒロチー」
「あ、え、ありがとう……」
不意打ちでそんなことを言われたせいで、カケちゃんのことが直視できない。
もう……なんなんだいきなりぃ……。
「あ、ちょっ……ヒロチーそこ、段差気をつけて」
「……へ?」
恥ずかしさで顔を俯かせていた私には、彼の言葉なんてまともに入っていなかった。
そして
「ほぁぁっ……⁉︎」
リビングにつながる廊下の段差に気づかないで、
思い切りつまずいてしまったんだ。
あぁぁ……また自分の世界に入って人の忠告を聞かないから……。
バカか私。
って……あれ?
足の関節はジンジンと痛む。
だけど、床にぶつけていてもおかしくない場所が、全く痛くないんだ。