【完】彼を振り向かせる方法
それに、痛いというかなんか……あったかい?
「……おーい、大丈夫か?」
「え……」
やっぱりというか、なんというか……。
疑問を持ちつつも、内心はこうなってるだろうなって少し思っていた。
カケちゃんがつんのめりそうになった私の身体を、身を呈して支えてくれていたんだ。
転んだのは計算なんかじゃないけれど……私って、なんかずるい。
下心丸出しだ……。
両肩を彼の大きな手でギュッと支えられたまま、
私は心の中で罪悪感を抱いた。
欲って怖い。
もっともっと……って、求めてしまう。
打算的にでも、触れたいと思ってしまう。
「ヒロチー……?」
「あ……ご、ごめんっ……」
透き通った低い声が降るたびに、
至近距離で感じる香りや体温に、
いちいち反応してしまうこの心臓は、いつになったらおさまるんだろう。
ほんの数秒の出来事だったのに、カケちゃんの体温が遠ざかるとき……
なんだかものすごく名残惜しかった。