【完】彼を振り向かせる方法
「上条さんって案外遊び人なの?」
シーンと静まり返った部屋の中で、尻無浜くんは言った。
「遊び人?」
「だって、あの翔が本気で好きになるくらいだから……テクとか使ったんじゃないの?」
軽い口調で言いながら、彼はリュックの中から筆記用具を取り出した。
あと、山のように積み重なったテキストも。
「私はそんな……テクニックとか知らない、です」
遊び人だなんて初めて言われたせいか、ちょっと変な気持ち。
思わず視線を下げて俯いてしまった。
尻無浜くんは適当に相槌を打ってから、さっきまでカケちゃんが座っていた位置に身体をずらした。
気付けば、さっきより随分近くに彼がいる。
「うーん、やっぱり可愛いなぁ上条さん」
俯く私を覗き込んで、尻無浜くんはそう言った。
「はい?」
いきなりどうしたの?
そんな疑問を浮かべながら、私も彼の方へ首を捻った。