【完】彼を振り向かせる方法
「さすが、見る目あるよなぁアイツ」
「ちょっ……」
さっきの言葉、届いてなかった?
そう感じてしまうほど、彼はさらに私との距離を縮める。
どうにか逃げ場を探るように右手を動かしていると、小指の間接に固い何かが触れた。
洋服ダンス……?
部屋の構造を思い出しながら、自分の真隣にあったそれを思い浮かべる。
ダメじゃん、どうしよう。
視線は尻無浜くんの胸元を捉えながら、半分パニックになっていた。
「もしかして、翔のため?」
「えっ……」
「このかんわい~ワンピースも、髪の毛も、全部アイツのため?」
男の子にしては厚い唇が、クイッと嫌味に持ちあがる。
加えて、外から差し込む日差しが、彼の赤茶色の髪を照らしだした。
「……っ」
「図星かぁ。へぇ~……翔のこと好きなんだ?」