【完】彼を振り向かせる方法
この顔、見飽きた。
そう言ってしまいたいほど、この短時間で見てきた彼のニヤリと微笑む顔だ。
「ははっ、上条さん面白いなぁ。本気で固まってるし」
固まりもするでしょ!こんなに男の子と接近することなんて、めったにないんだから……!
心の内でそう叫んでいると、今度は頬にむず痒い感覚が走る。
「ひぃっ!?」
「まぁまぁ、今だけだから。ねっ?」
ねっ?なんて呑気に言わないでよ……!
むず痒い感覚の正体は、尻無浜くんが私の頬を指で触れていたものだった。
「や、やめようよっ……どうしたの?」
右手で身体を支えて、左手で彼の手首を掴んだ。
だけど、利き手じゃないせいなのか、全く力が入らない。
「どうしたもこうしたも、可愛い子が目の前にいるんだし、何もしないわけにはいかないでしょ?」
なんじゃそりゃあ……!
まさにそう叫びそうになったときだった。
ガチャ。
尻無浜くんの後ろで、部屋の扉が開いたんだ。