【完】彼を振り向かせる方法
しかも、いつの間にか尻無浜くんは私の向かいの席に戻り、横にはカケちゃんが座っていた。
「つーか悪いねぇ俺まで。
実は今日ね、ここアポなしで来たんだけど、虹汰が中入れてくれてさぁ」
「そんで、俺の部屋に勝手に入って来たんだよこいつ」
頬を緩めながら、カケちゃんは尻無浜くんを指さして言った。
気付けば、さっきまでの険悪な雰囲気はもう、綺麗さっぱり無くなっている。
「そそ、翔にマジで怒られたわ。で、今日は勉強するから帰ってくれ~って頼まれてさぁ……。
んま、俺も宿題見せてもらうつもりだったし?居座っちゃったけど結局」
彼は悪戯をした少年のようにペロッと舌を出した。
なるほど、だから尻無浜くんが……。
「勉強ってのがまさか、上条さんと"ふたりっきり"でやるなんて思いもしてなかったけどねぇ」
妙に"ふたりっきり"を強調してくる。
そしてまた、ニヤリ。
これは、私だけに向けられた笑み。
そ、そうだ……尻無浜くん、私がカケちゃんのこと好きだって……。