【完】彼を振り向かせる方法
カァァァ……。
熱が顔の中心に集まっていく。
「さっきから何ニヤニヤしてんだよ、しなしー気持ち悪い」
私が対応に困っていると、カケちゃんが救いの手を差し伸べてくれた。
「ははっ、ごめんごめん」
「つーか早く終わらせないと。古典全然わかんねぇのよ俺」
尻無浜くんがペロッと舌を出して謝ったあとで、カケちゃんはテキストを私に向けて差し出した。
夏休み前に配られた、古典文法のテキスト。
1ヶ月以上も経っているのに、新品そのもの……ってことはカケちゃん、もしかして一度も手をつけてない?
「俺はねぇ、生物と数学と英語と古典!」
バッと手をあげて、堂々とそう言う尻無浜くん。
「そ、それってほとんどじゃあ……」
夏休みの前日にて、私は自分の事のように危機感を覚えたのでした。