【完】彼を振り向かせる方法
*彼氏と彼女
「あ~~!ごめんごめん忘れてた!今行くから!はい、はい、はーい!」
シャーペンを右手で持ったまま、左手で握っているケータイに向かって必要以上に大きな声を出しているのは、尻無浜くん。
電話の相手は誰なんだろう……。
ケータイが鳴った瞬間、ディスプレイを見た尻無浜くんは顔色を変えて立ちあがって、いまでもそのままの状態。
「ごめん翔、上条さんも。俺もう行かなきゃ!」
ケータイを切ると、尻無浜くんは一気に机の上の荷物を片づけ始めた。
「え、どうした?もしかしてお迎え?」
カケちゃんがそう聞くと、手を休めることなく彼は頷いた。
お迎え……?
「宿題は?しなしーあと生物と英語残ってんじゃん」
尻無浜くんの片付けを手伝いながら、カケちゃんは眉をひそめた。
「や、待たせるわけにはいかないし。なんくるないさ!」
本当に大丈夫かな、尻無浜くん。
カケちゃんのはもうすぐ目処がつきそうだけど、彼のは相当残ってる。
でも、事情を知らない私が引き留めることもできないし……。