【完】彼を振り向かせる方法
「これは、その……電柱にぶつかっちゃって」
至近距離のまま、私はお母さんと同じように、カケちゃんにも嘘をついた。
どういう形であれ、好きな人に嘘をつくなんてこと、もうしたくない。
私は俯いたまま、思い伏せた。
「そっか……」
カケちゃんの声色はいつも通り優しくて、私はホッと息を吐いた。
それにまだ、頬は彼の指に触れられたまま。
その指先が、傷跡を癒してくれるみたいにも感じる。
「ヒロチー」
「……ん?」
しばらく間をあけて、カケちゃんはまた私の名前を呼んだ。
私も顔をあげて、彼と目を合わせる。
「俺、好きだよ」
少しだけ控えめに頬を緩めながら、
そして頬を赤らめながら、彼はそう言った。