【完】彼を振り向かせる方法
それか、お腹空いちゃったのかな?
無理もない。俺だってそろそろ限界だ。
後ろを振り向いて、校舎の頂上に掲げられている時計を見る。
「もう1時か……」
始業式が終わってから、電車に乗ってここまで来た。
たった1駅なんだけどね。
本当は、ヒロチーと一緒に帰りたかったよ。
……けど今日だけ。
どうしても、あの人に会っておきたい。
俺は気持ちを引き締め直して、校舎から出てくる人たちの顔を一人一人チェックしていく。
あんだけのイケメンさんなら、すぐわかると思うんだけど……。
なんて、目を凝らしていると
「あ……」
いた。生徒玄関から、欠伸をしながらこちらに向かってくる。
駅のホームで見かけた顔と、段々と近づくその顔が、頭の中で重なった。
「あの、雛水さん……ですか?」