【完】彼を振り向かせる方法
「付き合うようになったのは、知らない。千紘から、好きな男が出来たってことは聞いてた」
ヒロチーがこの人にそう話したのは、おそらく2日前のこと。
昨日、言ってたもんな。その日先輩と別れたって。
「それで……復讐するつもりなのか?」
「復讐?」
「なんでここまで来た」
無駄な言葉がないせいか、スマートに、でも冷たく感じる。この人。
「さぁ……なんで?俺もよく分かんないっす」
無意識に頬が緩む。
本当に、よく分かんないから。
「なんにも、聞かされてないのかよ」
「……何が?」
「あいつから、千紘から……俺がしたこと」
小さな声で、雛水さんはそう言った。
俺がしたこと……。
その言葉でフラッシュバックする。彼女の、あの傷跡。
グイッ……!
俺は彼のブレザーの襟を掴んで、思いきりこちらへ寄せた。