【完】彼を振り向かせる方法





「……何かしたわけ?」



至近距離で俺は、奴を睨みつけた。

周りからザワザワと聞こえる、春桃の生徒たちの声。



けど今は、誰に見られていようと関係ない。




「お前のことが好きだと言った彼女を殴った。平手打ちで」



ピクリとも顔を動かさずに、相手はそう言った。




―――『電柱にぶつかっちゃって』



ヒロチー、ごめん。


実は俺あのときから、何かを隠そうとしてることはわかってた。


理屈なんてないけど、すぐにわかった。



電柱にぶつかるなんてもっとも、ヒロチーっぽい嘘だけど。




「……謝ったんすか」


殴りたい衝動を抑えて、そう聞いた。


本当に何かを我慢するときって、声が震えるんだな。




「謝った。あいつが、止めてくれたんだよ」




< 323 / 401 >

この作品をシェア

pagetop