【完】彼を振り向かせる方法
ヒロチーの心の内を考えるだけで、こんなにも胸が痛む。
「雛水さんには、他に女がいるんですよね」
俺はあのときの、彼女の涙を思い浮かべながら、そう聞いた。
「女じゃない……好きな女だ」
好きな女?
俺は口をはさむことなく、眉をひそめた。
「千紘と付き合う前から、好きだった。全部、話したよ。千紘にも」
ほんのりと赤みがさした頬。
さっきの冷たい表情からは、まるで想像できない顔をしている。
「へぇ……。じゃあ、一発ぶん殴っちゃってもいいっすか?」
コキッと指の関節を鳴らすと、周りの野次馬たちが騒ぎだす。
てゆーかこいつら、いつの間にこんな膨れ上がってたんだよ……。
「いいよ」
周りを見渡す俺に、雛水さんは迷いなく言った。
まぁね……そう言うとは思ってたけどさ。