【完】彼を振り向かせる方法
「元カノの彼氏」
俺の代わりにサラッとそう答えたのは、雛水さんだ。
「え、なにそれ。修羅場じゃん。ってか陸、彼女と別れたの!?」
「うん。おととい」
「ふーん……まぁどうでもいいや。行こ」
俺の身体を隅々まで見まわしたあと、彼女はクルリと向きをかえて歩き始めた。
「雛水さん」
「……ん」
俺は雛水さんの耳元に手を当てて、言った。
この人への、最初で最後のおせっかいだ。
「失うのが怖くても、伝えてください。本当に好きな人には、自分から」
耳元から口を離すと、雛水さんはおだやかに笑った。
「理佐(りさ)!」
そして、彼女に負けないくらい大きな声で、叫んだ。
「もー、なにー?」
理佐って言うのか、あの人。
その彼女が、声の方を振り向いた。
「今日、大事な話があるから。そのときはちゃんと聞いてくれ」