【完】彼を振り向かせる方法
なんだ、俺の前では告ってくれないのか。
若干がっかりしながら、横目で雛水さんを捉えた。
……上手くいくと、いいですね。
「なにそれ~?もういいから早く行くよー?混んじゃうんだからぁ!」
そう言って、理佐さんはまた前を向いて歩きだした。
「じゃあ……な」
「はい……さようなら」
背を向けたまま俺に手を挙げた後、
理佐さんの後を駆け足で追う雛水さんの背中を、俺はじっと眺める。
雛水さんはヒロチーに出会わなかったら、こんなに凛々しい背中を見せることなんて、なかったと思う。
腸(はらわた)煮えくりかえるほどムカついた相手だけど、
俺とヒロチーの間にはあんたが必要だったんだ。
「はぁー……腹減ったぁ」
明日はヒロチーのこと、学校で思いっきり抱きしめてやろうかな。
ギュルルルと鳴るお腹を押さえながら、俺はそんなことを考えていた。