【完】彼を振り向かせる方法
*打算的な元カノ
6.1……速いな、この人。
「あ、尻無浜くんだ。すごいなぁ、速いな……」
ある先生から手渡された特別な名簿表に目を通しながら、
私は"尻無浜 敦也(あつや)"と数学プリントの裏紙に、そう書き留めた。
「ふーん、しなしーって足速いんだ」
私の机を挟んで、目の前にいるのはカケちゃんだ。
放課後の教室で、いまは私たち2人きり。
そしてこの特別な名簿表っていうのは、
50メートル走のタイムが個人別に、それぞれ書いてあるものなの。
「カケちゃんも速いよね、6.3秒」
一度ペンの動きを止めて、彼に視線を向けた。
夕日に照らされる髪の毛の色が、とっても綺麗。
いつもより明るい色に見えて、カケちゃんが少し大人っぽくも感じるし。
「……もっと速く走れるもん」
でも、こうやって口を尖らせるところなんかは、
ちょっぴり子供みたい。うん、可愛い。