【完】彼を振り向かせる方法
「クスッ……ヒロチーってこの距離になると、いつも顔固くなるよな」
笑いながらそう言うカケちゃんは、どこか楽しそう。
固く、なってるのかな……。
だってやっぱり、緊張するもん。
私はカケちゃんの外見を見て好きになったわけではないけれど、
でも……どんな顔しても超かっこいいし……。
瞬きするのも忘れてしまいそうなほど、ビジュアルが綺麗で、見惚れてしまう。
緊張しない、わけがない。
「顔も、真っ赤だし……」
カチャンッ……。
私は右手に持っていたペンを、思わず机上に落としてしまった。
だってカケちゃんが、私の頬に触れたりするから。
「俺、相当やばいな」
「……え?」
「このまま、キスしそう」
その瞬間、スッと頬のラインをなぞられて、全身が痺れるように熱くなる。
カケちゃんの言葉だけが、妙に頭の中に響いて離れない。
そして、静かな教室の窓際で、風に扇がれたカーテンがふわりと揺れた。