【完】彼を振り向かせる方法
「そ、そっかぁ……穂乃香ちゃんも委員会の仕事で?」
焦りを隠しきれなくて、上手く舌が回らない。
さっきのシーン……見えてないよね……?
だって、穂乃香ちゃんが入ってきた扉から、結構距離あるし……。
そんなことを考えるので精一杯だった私が、このときカケちゃんの異変に気づけるはずもなかった。
カケちゃんが"穂乃香"と言った私の言葉で、彼女の方を振り向いたことも。
「そうなの~。千紘ちゃんのところは?神埼くんってもう帰っちゃったの?」
「あ、ううん。神崎くんは今日欠席なんだ」
動揺に気付かれないよう、なるべく笑顔で対応する私。
そう、穂乃香ちゃんとは同じ体育祭実行委員で、この前の実行委員会で顔合わせをしたんだ。
たまたま隣の席に座ったんだけど、同じ中学だってことが発覚して……。
そこから意気投合して、ここ数日で仲良くなった新しい友達。
こんなに可愛い子が同じ学校にいたなんて、ちょっと信じられなかったけれど。
「そっかそっかぁ。大変だね……って、あれ、翔?」
え……?
すると、私の隣に位置つけた穂乃香ちゃんは、カケちゃんの顔を見た途端、そう言った。