【完】彼を振り向かせる方法
知り合い?と聞こうとしたけれど、少し立ち止まる。
「そうだよね、カケちゃんも同じ中学だもん……知ってるよね」
"翔"と呼んだ穂乃香ちゃんにやきもきしながらも、
平然とした素振りでカケちゃんを見据えた。
「あぁ……うん」
いつもなら『そうそう!久しぶりだよなぁ、元気してた?』なんて、
カケちゃんだったらそう返すはずなのに、今回ばかりは例外らしい。
ニコニコとカケちゃんを見つめている穂乃香ちゃんに対して、
彼は穂乃香ちゃんが来てからずっと、俯き加減だ。
微笑んでいる穂乃香ちゃんを見ても、2人の間に漂う空気はいいとは言えなかった。
なにか、あったのかな……。
私の知らない、どこかで。
……って、やだなぁこれ。
私、妬いてるみたいじゃん。
「翔は、選抜リレー出るの?」
すると突然、穂乃香ちゃんが腰をかがめて、カケちゃんを上目遣いで見上げた。