【完】彼を振り向かせる方法
「翔、ほんとに帰っちゃったね」
カケちゃんが教室を出たあと、
名残惜しそうに彼が開いた扉を見据えながら、穂乃香ちゃんはそう言った。
「なんか私、お邪魔だった?」
今度は作業を進めている私の目を見つめる彼女。
タレ目でそんな可愛く困った顔されたら、男子なんてきっと、みんなイチコロだ。
カケちゃんも、そのうちの一人だったのかな……。
「そんなことないよ。……さ、私もそろそろ帰ろ!」
そうだ。
私そういえば、穂乃香ちゃんにカケちゃんという彼氏がいるってこと、話してあったんだよね。
『彼氏いる?』なんて、
女子の中では普通に交わされる会話。
あのとき、私が答えた後……穂乃香ちゃんは、どう思っていたんだろう。
穂乃香ちゃんは、カケちゃんのことをどう思ってる?
荷物をまとめながら、私はそんな考えに浸っていた。