【完】彼を振り向かせる方法
もしまだ、穂乃香ちゃんにカケちゃんへと気持ちが残っていたら……
って……考えすぎ、かな。
元彼女だってことも、確かめてすらいないのに。
「千紘ちゃん?」
「ん……?」
俯きながら廊下を歩いていると、穂乃香ちゃんが私の顔を覗き込んできた。
「なんか、考え事してるの?大丈夫?」
「あ……いや、うん。ちょっとね」
愛想笑いをしながら言葉を濁す私。
その間、2人しかいない廊下に、2つの足音がこだまする。
聞けるわけない……カケちゃんと付き合ってたの?なんて……。
「ねぇ、もしかして、私と翔のこと……考えてる?」
こだまに紛れた小さな声の方に、思わず視線を向けた。
「隠すのは嫌だから、先に言っておくね……私、翔と付き合ってたんだ。中学のとき」
その瞬間、どうしてか足を止めてしまった。
わかっていたはずなのに。
それなのに、胸の内がさっきよりもずっとうるさい。