【完】彼を振り向かせる方法
「千紘ちゃん?」
「あ……ごめんごめん」
立ち止まった私の方を振り向く穂乃香ちゃんに、作った笑みを向けて、彼女の隣まで歩いた。
「動揺させちゃったよね。ごめんね」
ゆっくりと歩きながらそう言う姿も、俯きながらばつが悪そうに笑う仕草も、
なにもかも見惚れてしまいそうなほど綺麗で、チクリと胸が痛んだ。
カケちゃんの前ではきっと、もっと可愛い表情を見せたりしてたんだよね。
「大丈夫だよ、全然」
出来るだけ柔らかい表情を保って、笑いかける。
上手く、笑えてるかな……。
そんなことを考えながら足を進めて、靴を履き替えた後、私たちは生徒玄関を出た。
5時半を過ぎているけれど、外はまだほんのりと明るい。
カケちゃんは今、駅に着いたくらいかな。
彼の顔を浮かべながら、なんとなく空を見上げて、私は小さく息を吐いた。
「千紘ちゃん、行こ」
「あ、うん」
穂乃香ちゃんの呼び掛けに応えて、彼女と一緒に校門の方へ向かった。