【完】彼を振り向かせる方法
「翔が今好きなのは、千紘だろ」
「……え?」
俯きながら一人で考え込んでいた私に、光波はため息交じりに言った。
「まぁ……元恋人に対して気まずい気持ちは、誰だってあるんじゃない?
光波の言う通り、千紘、もっと自信もちなよ」
光波の言葉にうなずいていた凛も、続いてそう言った。
たしかに……私も、先輩と同じ車両にならないよう、いままでと違うホームの位置で電車を待っていたりする。
決して惨い別れ方をしたわけではないし、先輩のことが嫌いってわけでもない。
だけど、今はまだまともに顔を合わせることはできないんだ。
カケちゃんも、そう思ってるのかな。
時間が経てば、普通に話せるようになれるのかな……穂乃香ちゃんみたいに。
「不安なら、翔に聞けばいい。元カノとのこと、全部。千紘は知らなかったんだろ?なにも」
そう、知らなかった……なにも。