【完】彼を振り向かせる方法
「ね、ねぇ穂乃香ちゃん、さっきの……我慢したって、どういうこと?」
靴を履き換えた後で合流した彼女に、私はそう問い詰めた。
「だって、千紘ちゃんから翔にキスしたでしょ?」
「えぇ!?」
ななな、なんでバレてるの!?
さすがにさっきの反応だけでそこまでは……。
「私があそこまで言えば、キスしてくれるかなぁって」
それはもしや、あの日散々私が悩まされた、あの台詞……?
「そしたら翔、理性抑えるの苦しくなって……とか色々企んでたんだけどね」
顎に指を添えて眉をひそめる穂乃香ちゃんは、なぜか活き活きして見えた。
「まぁ、キスまで進んだだけ、成功ってことで」
そして、無垢に見える可愛らしい笑顔で、彼女はピースサイン。
あぁ……そういえば、穂乃香ちゃんには『手も繋いだことがなくて、その先もしたことがない』
って、勘違いされたままだったんだ……。