【完】彼を振り向かせる方法
「「いっけー!!!」」
私と、応援席から立ちあがった皆の声が、重なった。
第一走者から第二走者へ……第三、第四走者……ここまでは7チーム中3位と、上々だ。
「いいぞしなしー!!いけー!」
後ろの男子が、張り裂けるくらいの声で彼の名前を叫ぶ。
尻無浜くんは、第五走者。
彼が走りだした瞬間に、カケちゃんが立ちあがる。
迫ってる……お願い、勝って……!
「いけー!飛ばせー!!!」
声を届けるためのメガホンなのに、今では私の両手を支えるものになっていた。
ギュッと力を込めて、祈るように握っていたから。
そしてついにテークオーバーゾーン、つまり、バトンを第六走者に手渡すところまで、尻無浜くんが駆けてきた。
だけどそのとき……
「あっ……」