【完】彼を振り向かせる方法
首を傾げるとそれに答えるように彼は言った。
「だってほら、中学の時の映画鑑賞会のとき、戦争もののやつみて途中退場してただろ?半泣きだったし」
そういえばそんなこと、あったような……。
それにしても
「よく覚えてるね…カケちゃん」
映画館の中なんて暗闇だし、私だって気づいた人は少ないはず。
いつも思うけど、やっぱりカケちゃんは人間観察とかそうゆうの…好きなのかな?
「べつに…たまたまだよ。たまたま」
目の前の彼はわざとらしく視線をメニューのもとにそらして
私から顔が見えないようにメニューで隠してしまった。
変なの……。
てっきり、「まあね〜」なんて呑気な言葉が返ってくるかと思ってたのに。
「あ、そーだっ。あのね、この前…カケちゃんにもらった香水つけていったんだよ」
「あ…うん、俺も気づいた。確か…俺に今日のこと頼んだ日だった?」
彼はメニューを退けて優しく笑った。