猫を撫でる。
いつの間にか、設計課の面々が美梨に
注目していた。
皆、ニヤニヤしていた。
ちょっと呆れ顔の者もいた。
はずみとはいえ、こんな公衆の面前で赤裸々な告白をしてしまった。
(しまった〜…)
美梨は、恥ずかしくて身の置き所が
なかった。
「部長、それ以上言ったら
セクハラっすよー」
左向かいの席で、涼太が冗談ぽく
部長に言った。
会がお開きになり、夜の街に皆で出ると、二次会はスナックでカラオケだ、と部長が騒ぎ出した。
明日は土曜日で、みんな行くつもりらしかった。
美梨はもう帰ろうと思っていた。
髪が煙草臭くてうんざりしていた。
「吉川さん、大丈夫?」
涼太が美梨に話しかけてきた。
この会に連れてきた張本人のくせに、
今までまともに話もしていなかった。
涼太は雑踏に紛れて、
美梨の耳元で囁いた。
「このあと二人で飲まない?
こっそり抜け出そうよ」