猫を撫でる。
涼太は仕事が終わると、一目散に美梨のいる部屋へ駆け付けた。
そして二人はすぐに抱き合い、夢中に
なった。
美梨は、涼太の少し汗ばんだ肌の
感触と体臭が好きだった。
「シャワーなんて浴びなくてもいいの…
涼太のそのままがいい…」
涼太の胸にしがみ付き、美梨は言った。
ホテルのレストランのラストオーダーの時間は午後九時半だった。
九時になると二人は慌てて服を身に付け、遅い夕食を摂りに出掛けた。
あいにく石垣島には低気圧が居座り、ずっと曇り空に時々激しい雨が降った。
しかし、二人にはそんなことは関係なかった。
どんなに風が吹き荒れて、南国の樹々が揺さ振られたとしても。
どんなに海が荒れ狂ったとしても。
ダブルベッドの上で、ひたすら裸で過ごす美梨と涼太にはどうでもよかった。
涼太は何度も美梨を絶頂に導いた。
石垣島が地上の楽園なら、二人は花の蜜に酔いしれる蝶に違いなかった。
蝶なら罪の意識などみじんもなく、欲望を抑える必要もない。
美梨が買った石垣島のガイドブックは
全く使われることがなかった。
美しい川平湾より、玉取崎展望台の
眺めより。
美梨と涼太は、
密室で抱き合う方を選んだ。
あの熱病のような3日間は、
今では幻のようだ。