猫を撫でる。
美梨の切り出した別れ話は、保留に
なった。
結局、ホテルのラウンジを出た後、
美梨は涼太のアパートへ行きそのまま
泊まった。
布団の中で、涼太の肩を撫でながら
美梨は思う。
和臣にはない、涼太のこの肌が自分を
狂わせてしまうと。
小麦色の少し湿ったような、
なめらかな肌ーー美梨はこの感触が
好きだった。
それは猫を撫でているようだと思った。
そう思いながら、眠りに落ちた。
朝、美梨が目覚めると涼太の心配そうな顔が目に入った。
「大丈夫?めっちゃうなされてたよ。」
美梨は久しぶりに夢を見た。
どんな夢だったかぼんやりとしか覚えていない。
「うん…大丈夫…」
そう答えながら、美梨は夢の中で泣いている自分がいた気がした。
それは確かに悪夢だった。
その夢で、思い出したくない過去が
蘇ったからだ。