猫を撫でる。
たいざい
せっかくのご馳走だと言うのに、美梨の箸は進まなかった。
「美梨、ごめん。
いい思い出作りたかったのに、
こんなことになって」
「そんなことないよ。
お料理、すごく美味しい。
さっきのことは忘れようよ」
明るくそういいながら、美梨はすっかり気分が沈んでしまっていた。
貴子に平手打ちされたことで、高部達にいたぶられた嫌な記憶がまた、蘇ってしまった…
はっ…と美梨は思い付く。
…… 夢だ…!
こないだ涼太の部屋で見た夢。
その中で、誰かに平手打ちされたことをふいに思い出した。
そうだ……
美梨は呆然とした。
漠然とした夢だったから、平手打ちをしたのは高部だと思い込んでいたが、違う。
あれは貴子だったのかもしれない。
…いや、確かにあれは貴子だ。
あの夢は正夢だったんだ……