猫を撫でる。
この有名外資系ホテルのラウンジは、
コーヒーが一杯1200円もする。
クラシックが流れ、フカフカの赤い絨毯、シックで豪華な調度品は外国にいる
みたいだ。
涼太は、美梨がこういうところが
好きだと思っている。
だから、こうして時々二人でお茶しに
来た。
涼太は素朴な男だが、ホテルのバーや
有名シェフの名前を冠したフレンチレストランに美梨を連れていってくれた。
「美梨と別れるなんて出来ない…」
涼太が俯き、頭を抱える。
そんな涼太を見ると可哀想になって
しまうが仕方なかった。
「俺は本当に美梨が好きなんだ。
これまで会った誰よりも好きなんだ。
だから、前の彼女とも別れた。
それなのに、こんなに早く終わるなんて、俺はどうしたらいいんだよ?」
「…」
そんなこと言われても、美梨のほう
こそどうしたらいいのかわからない。
「石垣島で、俺とずっと一緒にいたい、離れたくないって美梨がいってくれたじゃん」
涼太が熱っぽい目をして言う。
「….そうだけど…」
美梨はテーブルの下で、
脚をモジモジする。
石垣島でのことを思い出して、身体の奥が一瞬、熱くなってしまった。