猫を撫でる。
美梨は浮気は大罪だと思ってる。
自由契約の独身者同士ならまだしも、
どちらか一方でも既婚なら結婚生活を
破綻に導くものだと。
でも、涼太との恋は止められなかった。
美梨の夫和臣は製造メーカーの研究所に勤務する穏やかで真面目な男だ。
美梨ははたちの時、和臣と同じ会社に
一般職で入社した。
部門は違うが、ホテルの宴会場で開かれた会社の創立記念パーティーで10歳上の和臣と偶然同じテーブルになった。
それがきっかけで付き合うようになり、24歳の時、結婚した。
会社の中でも研究職は一目置かれるエリートだ。
美梨はそんな男の妻になった。
特に不満はない。
二人だけで暮らす家も買った。
早いうちに子供を作るつもりで美梨は退職したが、なかなか授からず、30過ぎてからは半ば諦めた。
美梨の親も和臣の親も孫を欲しがるが、和臣は「できないものは仕方ない。二人で仲よくやろう。」と言っていた。